てんとう虫の羽化

三日前の5月23日、アジサイ「隅田の花火」の葉にてんとう虫の幼虫を見つけた。

刺されたら痛そうなおどろおどろしい姿をしているが、ご存じのとおりアブラムシを食べてくれる益虫だ。幼虫の間だけでも400匹くらい食べるそうだから、アブラムシから見たらまさしく怪獣だ。調べてみると2週間のうちに3回脱皮を繰り返し、これは幼虫としては最後の姿、4齢幼虫のようだ。「元気で成虫になれよ」と声をかけて(うそである。虫に声をかけても無視されるだけだ)、その場を離れた。

 

2日後の昨日5月25日、どうしたかなと思って見に行くと・・・

なんと蛹(さなぎ)になっていた。場所は移動していないようだ。

 

こうなったら羽化するところを見てみたいと思うのが人情というもの。観察を始めた次第である。

 

最初にお断りしておきますが、ここからが長くなると思うので余程お暇か物好きな方以外は読むのをお控え下さい。お読みになってからの苦情は受け付け兼ねますので悪しからず。

 

9:47 いつの間にか逆立ちをしている。おっ、羽化が始まるのか。

しかし・・・

9:59 ちょっと目を離した隙に逆立ちをやめていた。

そして・・・

10:21 再び逆立ち。いよいよ今度こそか。

が・・・

10:34 またしてもステイホーム。

そして

11:50 またこのポーズ。

実はこのポーズ、「逆立ち」ではない。葉っぱにくっついているのはお尻の部分で、いわばバックエクステンションのような状態だ。

チョウチョウの蛹が葉の裏側にぶら下がるのと同じ状態で、だとすると「本当はこいつもぶら下がりたいのかなあ」とも思うが、自分から進んでこうしているのだから放っておこう。

 

12:00 バックエクステンションに疲れてまたしてもステイホーム。

さすがに観察も飽きてきた。

 

だがここで引き下がっては「暇人」の名が廃る。こうなったらこいつと根比べだ。

12:14 アジサイには申し訳ないが、葉っぱを1枚切り取らせてもらって苺パックに入れ、部屋の中で観察を続けることにした。

今日は我が一日をてんとう虫に捧げることにしたので、羽化を待つ間にいろいろ調べてみよう。知りたいことはいっぱいある。

 

てんとう虫は漢字で書くと「天道虫」。天道はお天道さま、つまり太陽のことで、天童よしみでないのは論を俟たない。ではどうして太陽の虫なのか。

 

丸いから・・・ではない。子供の頃にてんとう虫で遊んだ方はご存じだと思うが、てんとう虫を手に乗せるとどんどんどんどん指先の高い方に歩いて行き、ついに行き場がなくなると羽を広げて上の方に飛んでいく。その姿があたかも太陽に向かって羽ばたいていくように見えたことからその名がついたらしい。

 

てんとう虫は英語で何というかご存じでしょうか。

 

そうです、"ladybird"。"Ladybird"はイギリス英語で、アメリカでは"ladybug"というそうだ。"bug"とは昆虫(insect)のこと。さらに言うと、学者さんは"ladybeetle"という単語を好むらしい。

 

そこで誰もが抱く疑問は、どうして"lady"なのかということだろう。

 

なんと"lady"は聖母マリアのことなのだという。"Our Lord"は「我らが主、イエス・キリスト」、"Our Lady"は「我らがマリア様」なので素直に納得。ちなみに"my lady"は「うちのカミさん」だ。

 

ではてんとう虫とマリア様はどういう関係があるのだろうか。

 

有力なのは、てんとう虫の赤い色が聖母マリアがまとっている赤いローブを連想させることに由来するという説。7つの星は聖母マリアの「7つの悲しみ」と「7つの喜び」を象徴するものだともいう。(7つの悲しみと7つの喜びについても調べたがここでは割愛。)

 

ということは、ナナホシテントウでなければだめなの?

 

確かにてんとう虫といえばナナホシテントウの可愛らしい姿を思い浮かべるし、フタホシテントウのお面をかぶって『てんとう虫のサンバ』を歌われても新郎新婦はあまり喜ばないかもしれない。やはりラッキーセブンでなければだめなのかなあ。ちなみにフタホシテントウは正式には「ナミテントウムシ」というそうだ。「ナミ」は「並み」で、黒地に赤い星2つ、あるいは4つ星のナミテントウムシの方が圧倒的に多数派らしい。そして、ナミちゃんの方がアブラムシをたくさん食べてくれるという。だから皆さんもナミちゃんを応援してあげて下さい。

 

話が逸れてしまったが、てんとう虫と聖母マリアの関係を説明するもうひとつの説。

 

その昔、ある農夫が作物を荒らす害虫に困り果てマリア様に祈りを捧げたところ、大量のてんとう虫が飛んできて害虫を退治してくれ、豊作になったという。その話から"Our Lady's bird"となり、"ladybird"になったという説があるようだ。猛禽類のように害虫を補食する姿は"bird"という言葉がふさわしいようにも思える。

 

個人的にはこっちの説の方が好きかな。てんとう虫はアブラムシの他にハダニやカイガラムシも捕食し、黄色のボディに白い星のあるキイロテントウムシに至ってはうどんこ病の菌まで食べてくれるという。それらは野菜はもちろん、バラにとっても悩ましい病害虫で、我が家の庭にもどんどんてんとう虫が来てほしい。

 

ただし・・・である。悪いてんとう虫がいるので要注意なのだ。光沢のない赤や黄色地にたくさんの黒星があるニジュウヤホシテントウというのを見たことはないでしょうか。別名、テントウムシダマシ(漢字で書くと「天道虫欺し」)という害虫で農作物を食い荒らす。やつらは見つけ次第駆除しなければならない。

 

芋づる式に疑問が湧き、てんとう虫の知識をいっぱいゲットできたが、肝心の蛹は思い出したようにバックエクステンションとステイホームを繰り返すだけ。

 

18:51 どうも今日は羽化する気がないようだ。

昨日から平常勤務に戻り帰宅した妻に「今日は何してたの?」と聞かれ、一瞬うそをつこうかと思ったが正直に話して苺パックを見せると、「そんなもの、家の中に入れないで」と言われた。さすがに枕元に置くのはやめておこう。


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コメント
集中していただいて光栄です。
帰宅して今日のブログを読んだ妻が「私、悪役?」と不満げでした。
  • やなぎ
  • 2020/05/26 8:56 PM
そう言われてみればそうですが、平気でした。集中しちゃいました。
明日からの動向に期待しています。
  • よちゃこ
  • 2020/05/26 8:25 PM
ご飯を食べながら幼虫だの蛹だの見て、大丈夫でしたか?

そうなんですよ。ナミちゃんをよろしくね!

やっこさん、今日は何の動きもありませんでした。
  • やなぎ
  • 2020/05/26 4:52 PM
やなぎ妻、一刀両断ですね。。。
私はお昼ご飯食べながら楽しく読ませていただきました。ニジュウヤホシテントウが害虫というのだけは知っていましたが、たまに見かけるナミちゃんもお仲間だと思ってました。ナミちゃん、長い間ごめんなさい。
  • よちゃこ
  • 2020/05/26 12:23 PM
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