てんとう虫の羽化・完結編

皆様、たいへん長らくお待たせしました。いよいよてんとう虫の羽化の瞬間がやって参りました。

 

幼虫を発見してから8日、蛹を観察し始めてから6日後、ついにこの日を迎えた。

 

2020年5月30日(土)

11:50

頭を上げたり下げたり、今までのバックエクステンションとは明らかに違う動きだ。

11:51

11:52

これから完全に羽化するまでどのくらいかかるのだろう。

 

こうなったら歌い、祈るしかない。

 

 モスラヤ モスラ

 ドゥンガン カサクヤン インドゥムゥ

 ルスト ウィラードア

 ハンバ ハンバムヤン

 ランダ バンウンラダン

 トゥンジュカンラー

 カサクヤーンム

 

ご存じ「モスラの歌」(作詞・由起こうじ/作曲・古関裕而 昭和36年(1961))。

 

11:53

今、NHK朝の連続ドラマで古関裕而をモデルにした『エール』を放送しているが、GW中に番組PRで古関裕而の歌を紹介していて、この歌詞はインドネシア語だということを初めて知った。日本語にすると次のような意味だそうな。

 

   モスラよ 永遠の命 モスラよ

 悲しきしもべの祈りに応えて

 今こそよみがえれ

 モスラよ 力強い命を得て

 私たちを守れ 平和を守れ

 平和こそ永遠に続く

 繁栄の道である

 

どうやら日本語の歌詞が先で、それをインドネシア語に意訳してカタカナ化したようだ。架空の言語だとばかり思っていたので目から鱗。

 

11:54

新潟大学の「デジタルことばの窓」というサイトで面白い記事を見つけたので転記させていただきます。カタカナをインドネシア語に起し、それを和訳している。

 

 (前略)そこで、これを次のようなインドネシア語と考えると、意味が通る:

 Mothra, ya, Mothra
 Dengan kesaktian Indukmu
 Restuilah do'a hambamu
 yang rendah
 Bangunlah dan
 Tunjukkanlah Kasaktianmu

 

 モスラよ、モスラ
 あなたの母の神秘力で
 あなたの賤しきしもべの祈りを
 かなえたまえ
 さあ、起き上がり、
 その神秘の力をお示しください

 

面白い試み! こういうの大好きだ。

 

11:55 おっ

11:56 おおっ、一気にきた

11:58 よし、もうちょっと

さあ、皆さんもザ・ピーナッツとご一緒に!

 モスラヤ モスラ

 ドゥンガン カサクヤン インドゥムゥ

 ルスト ウィラードア

 ハンバ ハンバムヤン

 ランダ バンウンラダン

 トゥンジュカンラー

 カサクヤーンム

 

11:59 いけっ

12:01

12:02 出たっ!!

忙しなく動き出してから10分ほどの変身劇だった。

 

12:03 抜け殻の周りをうろうろ・・・


12:04 乗っかっちゃったりして・・

12:05 いよいよ旅立ちの時・・・

12:06

12:13 ここが気に入ったようだ。

それにしても何故こんなに鮮やかな黄色なのだろう。君は卵の黄身かって! 羽化したばかりでこんなに目立つ色をしていたら鳥に狙われそう。生物はすべてそうだが、生まれたてが一番危険だ。

 

12:21 お尻から何か出てきた。

12:25 羽だ。

12:26

12:31 どうやら羽を乾かしているらしい。

12:34 う〜ん、きれい。この姿を見ると"Ladybird"という気がしてくる。

12:53 乾いたようで、

12:57 格納。

14:28 体の色が黒ずんできた。

14:54 ひょっとして君は・・

15:22 ナミちゃんかな?

16:14 やっぱりナミテントウムシだ。

前々回のてんとう虫コーナーでお話ししたように、フタホシテントウやヨツホシテントウはナミテントウムシ(並みにいるてんとう虫)といって、ナナホシテントウよりも数が多いそうだ。作物を食い荒らすニジュウヤホシテントウなどの悪党一味と誤解されがちだが、立派な肉食系で、ナナホシテントウ以上にアブラムシやハダニなどを食べてくれる益虫だ。

 

夜道は危ないので一晩泊まってもらうことにした。

 

5月31日 早朝

差し入れのアンズの葉のベッドの上でまだ寝ている。

もう立派な成虫だ。ちなみにこれは雌のようだ。ナミテントウムシの雌雄の見分け方は割と簡単で、顔の先端が黒いのが雌、白いのが雄だそうだ。お尻の形状で区別するのが一番正確だがレディーに対して失礼なのでやめておこう。

 

身びいきではないが、このナミちゃん、べっぴんさんだ。

さあ、そろそろ別れの時。最初に幼虫を見つけたアジサイの葉っぱの上にそっと置いた。

遊んでくれてありがとう。


続・てんとう虫の羽化

観察を始めてから4日目の朝を迎えた。皆さんもその後どうなったのかと思っておられることでしょう。

 

観察開始翌日の5月26日、そして翌々日の27日は気づいた限りでは例のバックエクステンションを1セット行っただけだった。

とすると、観察初日のあの頻繁な動きは、蛹に成り立てで、自分の体の異変に驚いた幼虫が必死になって抗おうとする姿だったのかもしれない。上の写真は今朝7:23の様子。

 

昔、「妖怪人間ベム」というテレビ漫画があった。オープニングで、どろどろした液体がもがきながら妖怪人間に変身する場面があったが、てんとう虫の蛹も同じような心境なのかもしれない。

 

早く成虫になりたい!


てんとう虫の羽化

三日前の5月23日、アジサイ「隅田の花火」の葉にてんとう虫の幼虫を見つけた。

刺されたら痛そうなおどろおどろしい姿をしているが、ご存じのとおりアブラムシを食べてくれる益虫だ。幼虫の間だけでも400匹くらい食べるそうだから、アブラムシから見たらまさしく怪獣だ。調べてみると2週間のうちに3回脱皮を繰り返し、これは幼虫としては最後の姿、4齢幼虫のようだ。「元気で成虫になれよ」と声をかけて(うそである。虫に声をかけても無視されるだけだ)、その場を離れた。

 

2日後の昨日5月25日、どうしたかなと思って見に行くと・・・

なんと蛹(さなぎ)になっていた。場所は移動していないようだ。

 

こうなったら羽化するところを見てみたいと思うのが人情というもの。観察を始めた次第である。

 

最初にお断りしておきますが、ここからが長くなると思うので余程お暇か物好きな方以外は読むのをお控え下さい。お読みになってからの苦情は受け付け兼ねますので悪しからず。

 

9:47 いつの間にか逆立ちをしている。おっ、羽化が始まるのか。

しかし・・・

9:59 ちょっと目を離した隙に逆立ちをやめていた。

そして・・・

10:21 再び逆立ち。いよいよ今度こそか。

が・・・

10:34 またしてもステイホーム。

そして

11:50 またこのポーズ。

実はこのポーズ、「逆立ち」ではない。葉っぱにくっついているのはお尻の部分で、いわばバックエクステンションのような状態だ。

チョウチョウの蛹が葉の裏側にぶら下がるのと同じ状態で、だとすると「本当はこいつもぶら下がりたいのかなあ」とも思うが、自分から進んでこうしているのだから放っておこう。

 

12:00 バックエクステンションに疲れてまたしてもステイホーム。

さすがに観察も飽きてきた。

 

だがここで引き下がっては「暇人」の名が廃る。こうなったらこいつと根比べだ。

12:14 アジサイには申し訳ないが、葉っぱを1枚切り取らせてもらって苺パックに入れ、部屋の中で観察を続けることにした。

今日は我が一日をてんとう虫に捧げることにしたので、羽化を待つ間にいろいろ調べてみよう。知りたいことはいっぱいある。

 

てんとう虫は漢字で書くと「天道虫」。天道はお天道さま、つまり太陽のことで、天童よしみでないのは論を俟たない。ではどうして太陽の虫なのか。

 

丸いから・・・ではない。子供の頃にてんとう虫で遊んだ方はご存じだと思うが、てんとう虫を手に乗せるとどんどんどんどん指先の高い方に歩いて行き、ついに行き場がなくなると羽を広げて上の方に飛んでいく。その姿があたかも太陽に向かって羽ばたいていくように見えたことからその名がついたらしい。

 

てんとう虫は英語で何というかご存じでしょうか。

 

そうです、"ladybird"。"Ladybird"はイギリス英語で、アメリカでは"ladybug"というそうだ。"bug"とは昆虫(insect)のこと。さらに言うと、学者さんは"ladybeetle"という単語を好むらしい。

 

そこで誰もが抱く疑問は、どうして"lady"なのかということだろう。

 

なんと"lady"は聖母マリアのことなのだという。"Our Lord"は「我らが主、イエス・キリスト」、"Our Lady"は「我らがマリア様」なので素直に納得。ちなみに"my lady"は「うちのカミさん」だ。

 

ではてんとう虫とマリア様はどういう関係があるのだろうか。

 

有力なのは、てんとう虫の赤い色が聖母マリアがまとっている赤いローブを連想させることに由来するという説。7つの星は聖母マリアの「7つの悲しみ」と「7つの喜び」を象徴するものだともいう。(7つの悲しみと7つの喜びについても調べたがここでは割愛。)

 

ということは、ナナホシテントウでなければだめなの?

 

確かにてんとう虫といえばナナホシテントウの可愛らしい姿を思い浮かべるし、フタホシテントウのお面をかぶって『てんとう虫のサンバ』を歌われても新郎新婦はあまり喜ばないかもしれない。やはりラッキーセブンでなければだめなのかなあ。ちなみにフタホシテントウは正式には「ナミテントウムシ」というそうだ。「ナミ」は「並み」で、黒地に赤い星2つ、あるいは4つ星のナミテントウムシの方が圧倒的に多数派らしい。そして、ナミちゃんの方がアブラムシをたくさん食べてくれるという。だから皆さんもナミちゃんを応援してあげて下さい。

 

話が逸れてしまったが、てんとう虫と聖母マリアの関係を説明するもうひとつの説。

 

その昔、ある農夫が作物を荒らす害虫に困り果てマリア様に祈りを捧げたところ、大量のてんとう虫が飛んできて害虫を退治してくれ、豊作になったという。その話から"Our Lady's bird"となり、"ladybird"になったという説があるようだ。猛禽類のように害虫を補食する姿は"bird"という言葉がふさわしいようにも思える。

 

個人的にはこっちの説の方が好きかな。てんとう虫はアブラムシの他にハダニやカイガラムシも捕食し、黄色のボディに白い星のあるキイロテントウムシに至ってはうどんこ病の菌まで食べてくれるという。それらは野菜はもちろん、バラにとっても悩ましい病害虫で、我が家の庭にもどんどんてんとう虫が来てほしい。

 

ただし・・・である。悪いてんとう虫がいるので要注意なのだ。光沢のない赤や黄色地にたくさんの黒星があるニジュウヤホシテントウというのを見たことはないでしょうか。別名、テントウムシダマシ(漢字で書くと「天道虫欺し」)という害虫で農作物を食い荒らす。やつらは見つけ次第駆除しなければならない。

 

芋づる式に疑問が湧き、てんとう虫の知識をいっぱいゲットできたが、肝心の蛹は思い出したようにバックエクステンションとステイホームを繰り返すだけ。

 

18:51 どうも今日は羽化する気がないようだ。

昨日から平常勤務に戻り帰宅した妻に「今日は何してたの?」と聞かれ、一瞬うそをつこうかと思ったが正直に話して苺パックを見せると、「そんなもの、家の中に入れないで」と言われた。さすがに枕元に置くのはやめておこう。


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