田起こし前の田んぼに種漬花(タネツケバナ)が咲いていた。
アブラナ科の日本在来種で田んぼの周りなどの湿った所に生える。
無数の白い小花が可愛らしい。
斜め上を向いてつんつんしている細長いものは果実。すでに漢字名を記した後で何だが、種をたくさん付けるから「タネツケバナ」というのかというとそうではなく、この花が咲く頃に種籾を水に漬けて田植えの準備をすることに由来するそうだ。農村の生活と密着した名前がほのぼのする。別名を田辛子(タガラシ)といい、葉や茎に辛味があるというのでかじってみたが美味しくなかった。
同じ時期、道端に種漬花に似た花を見かける。
種漬花よりも丈が低く、花数も少ない。果実が茎とほぼ平行に上を向いてつんつんしている。
これは道種漬花(ミチタネツケバナ)というヨーロッパ原産の帰化植物で、道端や砂利敷きの駐車場など乾燥した場所に生える。
イヌノフグリ vs オオイヌノフグリといい、ニホンミツバチ vs セイヨウミツバチといい、在来種よりも外来種の方が大きくハデで勢いがあるという思い込みがあったが、タネツケバナ vs ミチタネツケバナは大きさも華やかさも在来種のタネツケバナに軍配が上がり、稀勢の里が白鵬の連勝を止めた一番のような興奮を覚えた。
タネツケバナとミチタネツケバナは湿地と乾燥地で棲み分けができているようで、人間の側が田んぼを守っていきさえすればこの先も種漬けの時期を告げ、我々の目を楽しませてくれることだろう。